ヘンデルを もっと楽しむ もっと聴く♪

日本でヘンデルがイマイチな理由

ヘンデル作品の主要ジャンルが「声楽曲」だからです

ヘンデルが最も情熱を燃やして創作に取り組み、多くの素晴らしい作品を残したジャンルは「声楽曲」です。
歌詞のある作品は、器楽だけの作品に比べて、どうしても言葉の壁があります。
イタリア語のオペラ、英語のオラトリオをヘンデルの主要作品ジャンルと考えると、日本ではどうしても不利になります。

ヘンデル作品の背景が、日本人にはなじみが薄いからです

ヘンデルのオペラやオラトリオは、ヨーロッパの史実や聖書などが物語の背景になっています。
これらは、キリスト教文化圏ではない東洋の日本ではなじみが薄く、「難しい」「わかりにくい」という印象を持たれがちです。
その結果、いくらヘンデルが付けた音楽が素晴らしくても、なかなか一般的な人気を獲得できない結果になってしまいます。

ヘンデルのオペラやオラトリオは、CD1枚では聴けないからです

オペラやオラトリオの全曲盤はCD2〜3枚の組物になり、しかも対訳等が付いている国内盤は値段が高いので、気軽に買うわけにもいきません。
ですがヘンデルの場合「どの作品がいいのか」「どのCDがいいのか」という情報が、一部の有名曲を除いて極端に不足しています。
その結果「メサイア」や「水上の音楽」でヘンデルに興味を持っても、そこから他の作品に進みにくい状況があります。

ヘンデルは「レッテル」を貼りにくく、エピソードにも乏しいからです

一生(現在の)ドイツから出ずに、いかにも厳格で「ドイツ的な」作品を残したバッハ、夭折の天才で生き方も作風も自由闊達な「神童」モーツァルト、幼少から父親のスパルタ教育を受け、耳が不自由になりながらも「不屈の精神」で名曲をたくさん残したベートーヴェン・・・などと比べると、ヘンデルはどうも売りとなるキャッチフレーズに乏しく、明快な「レッテル」を貼りにくい気がします。
ドイツに生まれ、イタリアで勉強し、その後イギリスに渡って帰化した・・・という経歴では、「どこの国の人?」になってしまうのですね。

日本のクラシック音楽業界?では、昔から何かにつけて「いかにもドイツ的な」「フランス風のエスプリが効いた」「イタリア人らしい」・・・のような「国別レッテル」で曲や演奏を語る傾向があります。
また、作曲家を巡る家族関係や恋愛事件のエピソードも、ヘンデルの場合日本では紹介され損なってしまいました。(史料が少ないせいもあるのでしょうが)
このような理由で、「語りにくい」ヘンデルは、どうしても損をしてしまいます。

なお、ヘンデルを「音楽の母」ということがありますが、ヘンデル以前にも素晴らしい音楽は多数存在しており(当たり前です!)、全く説明になっていません。
しかもヘンデルは男ですし・・・。(笑)

ヘンデルは、どうしても「バッハの次」的な扱いになってしまうからです

同じバロック時代の大作曲家なのに、なぜ日本ではヘンデルよりもバッハが圧倒的な評価&人気があるのか・・・これは今まで書いてきた「ヘンデルがイマイチな理由」を裏返せば簡単に説明がつきます。
バッハには「大量の器楽作品」があり(注:もちろんバッハも声楽曲は「主要ジャンル」です。しかし、他ジャンルの質量がヘンデルを上回る)、その結果、史実や聖書など西洋文化の知識がなくてもすぐに楽しめ、1枚物のCDでもとりあえず鑑賞に支障がなく・・・と好条件が続きます。

従って、クラシック音楽全般を対象にした「名曲・名盤紹介」のような本では、どうしてもバロック時代からはバッハ作品の数が多くなり、その分ヘンデルが割りを食らってしまうのですね。
まずいことに、「バロック音楽」や「古楽」の名曲紹介本でも、バッハと同一レベルでヘンデルを取り上げると、他の中小作曲家(というと失礼ですが)に割くスペースが少なくなるためか、やはりヘンデルは冷遇される傾向にあるようです。

ヘンデルはバッハと同じ1685年に生まれたので、「生誕★★★年」は常にバッハと被ってしまいます。
現状ではバッハと同じ土俵で勝負すると、どうしてもヘンデルが不利になることは否めません。
・・・・・ということで、2009年の「没後250年」に、ヘンデルのために何かせずにはいられない私なのでありました。 (^ ^;)

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